苧環の舞
苧環(おだまき)とは、つむいだ麻糸を内に空にして丸くまいたもの、糸巻玉のことです。
あるところに、年頃の美しい娘がおりました。そして、いつの頃からか一人の若者と知り合い、若者は毎晩娘のところへ通うようになりました。家人が心配して娘にどこの若者かと問いますが、娘にも分かりません。母親は娘に、縫い針をつけたおだまきを手渡し、今度来たら若者に気づかれないように、若者の着物の裾に縫い針をさして、おだまきの糸を延ばしてみなさいと命じます。
朝になり若者の帰った後、娘はおだまきの糸をたぐって若者の後を追いかけます。糸はずっと山奥に続き、杉の根元の穴に入っていきます。娘は中に向かい、自分はもうあなたの子どもを身ごもっている。どうか出てきて姿を見せて欲しいと訴えます。
すると中から苦しそうな声が聞こえ、自分は本当は蛇である。おまえを好きになり夫婦の約束までしたが、お前に刺された縫い針の毒で今死ななければならない身にある。しかし、自分は決してお前を恨んだりはしていない。生まれてくる子どもをよろしくと頼む、という声を最後に姿を消す、という物語です。
三輪山伝説に基づいているようです。(※郷土文化研究会編 「早池峰神楽より」)